REPORT東京国際映画祭 上映レポート

数ある谷崎潤一郎作品の中から「細雪」や「痴人の愛」ではなく、なぜ本作「神と人との間」を選ばれたのか?

内田)谷崎の短編を読むと、狂った作品が多くて長編と全然違うんですね。文学でやろうとした作品と、彼が好き勝手書いた短編。その中でも「神と人との間」を選んだのは、本人の話というのが大きいです。今の世の中だと細君を譲渡するなんてとんでもない話だと思うんですけど、彼が実際にスキャンダルになった事件をぜひ現代でやってみたいなと思いました。

穂積、添田、朝子の三角形が、途中、編集者を挟んでひし形になりながらも変化していく様子が面白かった。編集者を狂言回し的に入れた意図とは?

内田)現代劇にアレンジしているので、ストーリーラインがだいぶ違うんですね。大正時代に谷崎潤一郎が書いた同じタイトルの小説があり、それは谷崎潤一郎本人、それからその奥さん、そして谷崎の親友の佐藤春夫をモデルにしてるんですが、この3人だけだとちょっと考え方が特殊な人しかいないというか(笑)。編集者を現代の視点の、人間の基礎的な考えの人として入れています。

役者にはどのように演出をされたのか?

内田)自分の中でまず、この映画はSMだなというのがありました。今ワイドショーを見てると、こういう恋愛って今だともしかしたら許されないかもしれないですけど。でもこういうのもひとつの形として実際にあったんで、あんまり演出というか・・・セリフがすごい長いので、(役者は)それを覚えるのにすごい大変で、ほんとに嫌になるぐらい大変だったみたいなので、逆に「こうしてくれ!」という時間もなく、ちょっと放置プレイみたいな感じでやっていただいたらこんな感じになりました。でも今日スクリーンでみたら全然現場の雰囲気と違いますね。戸次さんとか。ビックリしました。最初正直合わないかなと思ったんですよね。渋川清彦さんと戸次さん、お二人の演技スタイルが全然違うので。意外に息が合ってるなとびっくりしました。

大正時代でも姦通罪があり、この事件自体も一大スキャンダルとなった。表現として気を付けた部分はありましたか?

内田)古い小説では許されたものが、今は許されない時代になっているので、表現に気を付けなかったといえばウソかもしれないです。今は何をやっても問題になってしまうので。とくにこういう映画って「日本独特の文化」と括られてしまうので、なんでもかんでも日本独特の文化って言われるのも癪だし、そういう部分は気を付けたかもしれない。でも本題は3人のSM関係なので、撮影に入ってからは考えなくなりました。

女の子たちが下着姿で飛び出していくシーンはどうして考えられたのか?

内田)あのシーンは大変だったんですよ(笑)。普通の日中に撮影したのでプロデューサーの顔が青ざめてました(笑)。最初は素っ裸でやろうとしたんですけど「それはほんとに勘弁してくれ」と(笑)。あのシーンは僕は結構好きで。僕は無宗教なんですが、宗教を小ネタに挟むことが多いんですけども。ドアを開けたときに光が入ってくる、外国人が好きなキリスト教独特の光が差し込むというのをやりたくて。たしかに今日見てても戸次さんの寂しい感じが出ていて個人的にも好きなシーンになりました。

その添田の哀しさは、監督は何だと解釈されているのか?

内田)孤独な人だから独りぼっち、じゃないと思うんですね。孤独な人ほど周りに人をいっぱい侍らせたり、それが本当の友情かどうかは置いておいても友達が多かったり。今回は、戸次さん演じる添田はそういう風にしようかなと思って、周りに人がワイワイいる、喋り方は常に明るいという風にしました。“客観的に”が性癖な人だと解釈しています。

穂積がずっと帽子をかぶっているが、衣装を含め、あれは何を表現されているのか?

内田)あれは渋川清彦さんが帽子のつばを折り曲げたんですよね。「昔はみんなこうだった」って(笑)。穂積が小学生のころからずっと使っている帽子という解釈です。前の映画でも使っていた小道具(※『獣道』でアントニーが被っている)を、今回の現場でも使いまわして(笑)。これからずっと使いまわそうかな(笑)。今回は渋川清彦をいかにかっこ悪く見せるかということもあったので、服にもこだわりました。シャツはチェック、当然ジーパンにイン。でも秋葉原とかのオタクとはちょっと違うし、服に頓着しない人が選ぶチェック柄というのがあると思うので、衣装さんにインターネットの写真を見せて「こういうのがいい」と。衣装さんにしたらどこが違うのかわからなかったかもしれないけれど(笑)。ちなみに添田に関しては音楽が好き、穂積は服装に関しては何も考えてないっていう風にオーダーして。戸次さんはリーゼントにしようと考えていたので、こうなりました。

穂積と添田が「なぜか馬が合った」という始まりがすごく不思議な感じがして、監督は二人が馬が合った部分はなんだったかと思うか?

内田)実際の人物たちもそうなんですが、全然性格が違うんですね。僕もそうなんですが、似たような人とは馬は合わないと思うんです。基本的に自分と全然違うタイプの人と馬は合うと思う。あの二人に関して言うと真反対の性格だったから。実際の人物は小説家なんですが、僕が考えたのは、当初添田は漫画家を目指したわけですけど、その漫画が穂積は本当に好きだったんじゃないかなと。才能を評価していたと。